鵜沢梢の短歌のページです
私の所属しております短歌結社誌「心の花」(佐佐木幸綱主
宰)
に発表された短歌から毎月その月に合ったものを選んで1首ずつお届
けします。
時々「短歌研究」に掲載された歌も。
第
2歌集『シヌック・雪食う風』(短歌研究
社・
2012年3月)

じじじじと秋の虫鳴く声を出しコンピュータは機嫌良く居る
Eメールの発信時刻は六時半朝靄かかれるトロント見えくる
アメリカの議会図書館呼び出してかの夢探すインターネットに
翌日の日本のニュース読みて居り予言のごとくインターネットに
一台のコンピュータにて世界中とつながれてることなにかうそっぽい
。。。われの存在。。。
ふるさとはとおくにありておもうもの日本に行きて疲れて帰る
日本にはもう住めないと思い居る考え方のずれの増しきて
わたくしは日本人だと思えども日本にて知るカナダ化の部分
日本ではアウトサイダー、カナダではマイノリティーのわれの存在
。。。花火。。。
メモ帳に花火の時刻確かめてそわそわと待つ日の暮れゆくを
海岸に花火見るため歩きゆく人の流れにわれも乗りたり
日の落ちて暗くなりゆく数刻を長しと思う花火待ちわび
次々に開く花火の生命(ヴィ)の色その裏にある闇も見て居り
。。。赤きサルビア。。。
アマリリスかっと開きて驕慢な女二人が競い合うごと
離婚せし男と坐るレストラン赤きサルビアわが目にするどし
大きめのピザひと切れの昼食になにか足らざる思いのつのる
鬱の日は空気となりてねむりたしねむの木に咲く花をまくらに
。。。うつぎ。。。
噴水のみず高々と噴きあがり学生らみな輝きて見ゆ
授業終えはつ夏の道帰る時卯の花らしき花香り来る
うつうつとうつぎの花の香りきて出せざる手紙わが胸に持つ
ちぎり絵の朝顔の花ほの赤く日本の花を恋えり水無月
。。。ある夏に。。。
習いたる日本語どれもてい ねいで馬鹿にされるとマイケルこぼす
はつ夏の木苺の花白く咲く シャイな学生のはにかみに似て
ぐんぐんと夏雲の湧く青い 空予感いくつか形なしゆく
かなかなのかなしき声のま じり居り日本にて採りし録音テープ
雷鳴の遠ざかりゆく夏の夜 遅き夕餉にダークチェリー食む
。。。るるるる。。。
支えられ支えて「人」は成 り立つと漢字教えつブライアン君に
窓に来て五月の燕るるるる と鳴き始めたり夏呼ぶ声に
小雨やみ明るき午後のひと ときを心の裡の窓ガラス拭く
花びらが風に乗るごとフ ルートのかすかな音が風に乗り来る
赤ちゃんの小さき寝息思わ せてかすみ草咲くわれの午睡に
火をふたつ持つ虫と書く 「螢」なり字を眺めつつほうたる恋えり
。。。ハミング。。。
耳慣れぬ陰音階に魅かれ聴 く「島唄」という沖縄のうた
しじみ蝶飛ぶがに花びらあ じさいの押し花置きて絵葉書作れり
街角に貰いし広告風船の明 るき赤にハミング湧き来
買いて来し青菜に菜の花咲 きおれば切りて活けたり益子の猪口に
菜の花は光に向きて伸びて ゆくわたくしもまた光に向きて
。。。青きロべリア。。。
空高く風渡るらしさわさわ とポプラさわぎてとおせんぼする
久しぶりに花を買いたり七 月の陽差しのごときグラジオラスを
求めこし苺を洗う昼下がり 東京の苺値の高かりき
起きぬけにジャズを聴きい る日曜の雨の朝(あした)にロべリア青し
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